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ボーリング調査

ボーリング柱状図

ボーリング柱状図は、地盤調査(ボーリング掘削、標準貫入試験、原位置試験、試料採取、室内土質試験など)の結果一式を一定様式にまとめて整理したものです。調査を対象とする地質によって、「岩盤用」と「土質用」の2種類があります。

標準貫入試験を併用したボーリング調査では、図-1(土質用の例)に示すように地表から掘削深度までの土質構成、各層層厚、観察記事、標準貫入試験N値、試料採取状況、室内土質試験実施位置・項目などの情報が一目で確認できます。

ボーリング柱状図の見方

ボーリング柱状図には、1~7に示す場所にそれぞれ次の情報が記載されています。

  1. 標題など:柱状図の上部に示される基本情報
    ボーリング名(孔番)、調査位置(住所)、発注機関、調査業者名、孔口標高、使用機械など
  2. 土質構成:各層の分布標高、層厚、土質区分、色調、相対密度・相対調度(強さの相対値)
  3. 試料観察記事:土の粒度・水分の含み具合・貝殻や腐食物の混入有無などを確認することが出来ます。
  4. 地下水位
  5. 標準貫入試験:10cm毎の打撃回数、N値、N値折線グラフ
  6. 原位置試験:現場透水試験、横方向水平載荷試験
  7. 試料採取:採取位置、使用サンプラーの種類、室内試験の実施・内容


図-1 ボーリング柱状図(JASIC様式)の例

地質想定断面図の作成

道路などの線状構造物や長い建物を対象とする調査では、一方向に複数のボーリング調査を行うことになります。その場合、実施したボーリングを水平方向に関連付け、地層の連続性を図示した地質想定断面図を作成します。地質想定断面図の例を図-2に示します。

地質想定断面図の作成においては、次の点に留意することが重要です。

①地形・地質情報の活用
調査地周辺の地形図、地質図を収集し、調査地を含む範囲での大局的な地形・地質を把握します。
②現地踏査の実施
上記①の情報を現地において確認します。堆積環境を理解するためには現地において川や山との位置関係を確認することが重要です。
③地層連続性の判断
ボーリング調査で得られた土質、層相、N値、混入物有無などの全ての情報から各層の水平方向連続性を判断することが重要です。

この図-2の例では、洪積層(D)が水平に堆積する台地部が、その後河川による削り込みを受けて、谷部に新たに沖積層(A)が堆積していることが分かります。


図-2 地質想定断面図の例(既存調査に2箇所の調査を入れた例)

<参考資料>
ボーリング柱状図作成要領(案):http://www.pref.nara.jp/secure/42688/19boring.pdf

標準貫入試験(standard penetration test 略記号:SPT)・N値

標準貫入試験とは

地盤調査の際にボーリング掘削と併用して実施される最も一般的な調査方法です。日本工業規格(JIS)に使用器具・調査方法の詳細が規定されています。

標準貫入試験(SPT)用サンプラーを決められた重さ(63.5kg)の重錐(ハンマー)を決められた高さ(75cm)から自由落下させ、30cm地盤中に貫入させるために必要な落下回数をN値として測定します。標準貫入試験の概要を図-1に示します。

N値は地盤の硬軟・締り具合を示しますので、一定の間隔で測定することによって深さ方向のN値分布を求め、計画している構造物に適する支持層を決定することが出来ます。

また、SPT用サンプラーは中空構造になっており、貫入させた深さの土を採取することが出来ますので、採取した試料の観察から、土の種類・水分の含み具合・貝殻や腐食物の混入有無などを確認することが出来ます。

図-1 標準貫入試験概要図

標準貫入試験(N値)の利用と留意点

標準貫入試験はほとんど全ての地盤に適用できること、地盤情報を数値化できるN値と土質試料採取の二つの機能があること、簡単な試験方法であることの理由で最もポピュラーな地盤調査方法として広く利用されています。

①標準貫入試験N値の利用

  • 粘着力(c)、内部摩擦角(φ)など強度定数の推定
  • 変形係数や横方向k値の換算
  • 相対密度(密な、緩いなど)やコンシステンシー(強さの相対値)の推定
  • 許容支持力の推定
  • 液状化強度の算定

ただし、標準貫入試験N値の利用に当たっては次のような点に留意する必要があります。
②標準貫入試験N値の利用に際しての留意点

  • N値から設計定数を推定する場合は、精度を理解したうえで利用する。
  • 地盤の種類が異なる場合には相関性が変わることを考慮した上で利用する。
  • N値自体の精度についても十分配慮する。例えば、N値が小さい軟弱地盤では精度が悪くなる。礫を含む地層での測定においては礫打ちの影響について判断し、必要に応じて礫補正をする。

N値と長期許容地耐力の関係

N値と長期許容地耐力の関係は表-2の通りです。

表-1 長期許容地耐力表(kN/m2)(参考資料3より一部抜粋)

地盤種類 N値 長期許容地耐力
礫地盤 密実なもの 50以上 600
密実でないもの 30 300
砂質地盤 密なもの 30~50 300
中位 20~30 200
  10~20 100
ゆるい 5~10 50
非常にゆるい 20~30 300以下
粘土質地盤 非常に硬い 15~30 200
硬い 8~15 100
中位 4~8 50
軟らかい 2~4 30
非常に軟らかい 2以下 20以下

一戸建てなど小規模建築物基礎に必要な許容地体力の目安は表-2の程度です。

表-2 必要地耐力の目安値(kN/m2)(参考資料3より一部抜粋)

木造平屋 木造2階建 木造3階建
布基礎 30以上 30以上(多雪地50以上) 50以上
べた基礎 30未満 30未満(多雪地50未満) 50未満

なお、構造物が長期的に安定であるためには以下の点にも留意することが必要です。

  • 砂質地盤については、地耐力以外に液状化の検討を要することがあります。
  • 盛土地盤については、N値が多少高く得られていても、盛土後5年未満の場合や層厚が1mを超える場合には沈下・不同沈下についての検討が必要となる場合が有ります。

<参考資料>
1)ボ-リングポケットブック:(一般社団法人)全国地質調査業協会連合会編、p335~341、2003.8.20
2)標準貫入試験方法:http://www.jiban.or.jp/file/organi/bu/kijyunbu/jis_a_1219.pdf
3)小規模建築物基礎設計の手引き:日本建築学会、p36、1988