地盤沈下

粘土の圧密沈下

圧密沈下とは

水を多く含んだ地盤(主に粘土やシルト層)の上に土を盛ったり建物などを建設した際(図-1参照)、その重さで土中の水が抜け、体積が減少する(図-3参照)ことによって生じる地盤沈下です。(図-2参照)


圧密沈下の現象


重さで土中の水が抜ける

圧密沈下が発生すると。

圧密沈下が起こると地盤が沈下します。沈下の量は、簡単に言えば図-1に示したように地盤中の水が抜けた分、地盤が沈下します。

その地盤の上に家が建っている場合は家が傾いたり、場合によっては家や基礎にクラックが入ります。道路の場合は、地面が波をうつような状態になり、車の走行性が悪くなります。また、圧密沈下対策を実施した箇所としない箇所の境界では、クラックや段差が発生します。

圧密沈下の大きな問題点

圧密沈下が問題となるのは、その多くは沈下『量』ではなく沈下『時間』です。
 たとえば、沈下する量が1mとしても工事中に沈下が終了してしまえば、その後につくる家や道路は沈下しません。工事自体は大変ですが、その上の家や道路を利用する私たちは、安全・安心です。

しかしながら、沈下量が20cmであっても沈下が1年、2年と続く場合は、大きな問題となります。家を作った後でも沈下が続くからです。家の場合は、数cm沈下し傾いただけでも異変を感じるようになります。国土交通省告示では、家の傾きの許容限度は3/1,000までと言われています。これは、「1,000mm離れている点の高さが3mm異なる」までという意味で、たとえば家の長さが5mの場合は、15mm高さが異なると許容値を超えているということです。

家の傾斜の簡易な計測法


住宅保障機構HPより

①の計測手法

1)透明なチューブにこぼれない程度に水を満たし、壁にテープ等で固定します。床面まで垂直におろし、反対側の壁まで床にチューブを渡し、もう一方のチューブ先端も反対側の壁に固定します。
2)両端のチューブの水面から床面までの高さを計測します。
3)両端の水面の高さの差が3/1,000以上であれば、専門工事業者に相談する事をお勧めします。

どういう場所で圧密沈下が発生するの?

圧密沈下は、軟らかい地盤(粘土や腐植土等)で発生します。一般的に軟らかい地盤が多い箇所は以下のようなところです。

  • 昔、池や湿地帯だったところ
  • 埋立地
  • 低地

図-2に一般的に軟弱な粘土層が分布する地域を示しました。相対的に粘土層が多い地域は、F:後背湿地、G:谷底低地、H:旧河道、I:三角州・三日月湖、K:堤間湿地、L:潟湖跡です。

地名に「水」が絡んでいる場所も注意が必要です。たとえば、「水、川、谷、沢、沼、池、窪、田、堀」等が該当します。

また、地盤の上に重いものを載せなくても、井戸から地下水を揚水(農業用水、工業用水として)している場所でも圧密沈下が発生することがあります。

圧密沈下の対策手法

事前の圧密沈下対策は、以下のようなものが一般的です。

  • 粘土層にセメント等を混ぜ、沈下しない性状に変える。
  • 地盤上に載せるものを軽いものにする。
  • 粘土層の下にある沈下しない固い土層に杭を打ち、その上にものを載せる。
  • 家や道路をつくる前に、沈下させてしまう。

戸建て住宅の場合は、地盤のセメント改良や小口径杭、基礎の工夫(べた基礎等)が主体です。


戸建て住宅の主な地盤対策(日本材料学会地盤改良部門委員会編:実務者のための戸建て住宅の地盤改良・補強工法 考え方から適用まで、p13、2010.2)